「家に帰るって嬉しいよ」回復リハビリテーション病棟より

回復リハビリテーション病棟の看護実践を報告します。
 Aさん(70歳代・男性)は、当院急性期病棟にて胆石の治療を終え、09年3月にリハビリと在宅調整目的で回復期リハビリ病棟へ来られました。
 当初は、寝たきりで会話もできない状態が多く、夜になると興奮して動きが活発になり、昼間は眠って過ごす生活で、壁や布団へ排尿する行動もみられました。同居のご家族は高齢の妻だけであり、在宅生活は難しく施設入所を考えていました。しかし、ご家族としては可能であれば在宅で生活させたい思いも抱いていました。
 私達は、まず初めに、毎日飲んでいる睡眠薬が夜間の興奮に関係している可能性から毎日の服薬をやめ、トイレの認識をつけるため日中はトイレへ誘導する取り組みを始めました。しばらくは大きな変化はありませんでしたが、排泄に関して尿意を感じても我慢できず排尿していることが分かってきました。
 すぐに排泄できるように、病室内でポータブルトイレや尿器を使い始めましたが、初めは全く認識できませんでした。しばらくすると、職員の介助を嫌がり自分で尿器を使おうとする行動が出てきました。
 この時期からトイレに行こうとする行動もみられ始め、ご家族からも認知症があっても排泄や睡眠の状況が少しでも安定すれば在宅で介護したいという思いも聞かれました。
 その後の関わりでは、午後から夜にかけてトイレの回数が増えているのは、加齢によって循環機能が低下していることが原因だと分かり、食後は1時間横になってもらい、水分が多く含まれるお粥からご飯食へ変えることで、夜間よりも日中のトイレ回数が多くなっていきました。
 元々、夜間トイレの回数が多く規則正しい生活リズムではなかったと分かり、短時間でもぐっすり眠り疲れが取れていれば、一般的な生活リズムでなくても良いのではと考えました。平均2時間程の睡眠時間でしたが、夜中でも起きていたい時はスタッフと一緒に過ごし、起きたい時は起きていてもらうこととしました。
 退院が近付いた頃、Aさんは「トイレも間に合うようになって良かった。自分の家に帰れるって嬉しいよ。」とお話しするようになりました。ご自分で尿器やトイレを使うことを習慣として、元々の生活リズムを取り戻し、在宅生活を目指せる状況になり自宅へ退院することができました。
 今回の関わりは、認知症が原因で起こる行動だけでなく、元々の生活習慣を調べて尊重しながら関わる大切さを学ぶことができた事例でした。